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[No.1737]

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「表紙」2018年08月09日[No.1737]号

作る楽しみ、贈る喜び 琉球手まり

色も模様も無限大 琉球手まり保存会 代表 宮城玲子さん

 かつて女の子の幸せな結婚を願い、母や祖母が十三祝いの時などに贈っていた琉球手まり。宮城玲子さんは、そんな伝統玩具を約50年前から作り続けている。琉球手まり保存会代表として、また講師としても、伝承や普及に尽力している。「教えることが趣味」という宮城さん。作る楽しみと人に贈る喜びを、時代を超えて伝え続けている。

 鮮やかな色とりどりの糸が紡ぎだす幾何学模様が特徴の 琉球手まり。

 材料は毛糸と木綿糸、刺しゅう糸、針、紙くずのみ。シュレッダーで裁断した紙をビニール袋に入れて丸め、毛糸と木綿糸を巻き付けて球体にする。そこに色鮮やかな刺しゅう糸をひと針ひと針刺して模様を作り上げていく。

 昔は母親や祖母が「玉のこしに乗れますように」「幸せな結婚生活が送れますように」と願いを込めて女の子に作っていたという。

展示会が転機に

 宮城玲子さんの琉球手まり制作歴は約45年。義母の故・宮城初子さんと共に、琉球人形「うみないび(王女)」の考案者で助産師でもあった故・当山美津さんから指導を受けたのがきっかけだ。「糸の色や柄を変えるだけでもどんどん変わっていくので飽きない。無限大に楽しめる」。もともと手芸などが好きだったという宮城さんの創作意欲をかき立てた。

 半年程習った後も、趣味で制作を続け、「花笠」や「かせかけ」「旗頭」など、数多くのデザインを考案した。

 転機が訪れたのは作り始めて約35年後の2007年。作品が何百個もたまったのを機に、約200作品を展示会で披露した。多くの人の協力を得て開催した展示会は来場者千人超えの大反響。作り方を教えてほしいという希望者も約100人集まった。

 翌年から講師としての活動を開始。「琉球手まり保存会」も発足し、代表として伝承と普及に努めている。

 「琉球手まり作りはとても良い趣味だと思う。一人の時間が充実し、始めた方は生き生きしてくる。まりを作っていると無心になって癒やされるし、もらった人もとても喜んでくれる」とほほ笑む。

幸せへの願いをつなぐ

 自分が楽しんで喜んでもらうために作っているという宮城さん。売り買いはしていない。「商品化には責任を伴うし、ビジネスは苦手。作って楽しみ、人に贈って喜ばれる。これが一番。生徒さんにも作って楽しんで、周囲の人に差し上げて、どんどん新しい作品を作ってと言っている」

 保存会としての活動にも意欲的だ。8月1日に開幕した第1回沖縄空手国際大会の副賞用に120個のまりを寄贈した。これまでにも世界のウチナーンチュ大会、沖縄平和祈念堂での「平和の礎刻銘者追悼清明祭」をはじめ、県内外の平和・友好式典にも贈呈してきた。「平和に通じる活動の役に立てばうれしい」。かつて親から娘へと思いをつないできたように、作り手の思いをつなぐ平和のバトンとしての役割を果たしている。

 教えることが趣味という宮城さん。「後世に残っていくものは残っていく。無理せず、できる範囲で活動していきたい」と気負いはない。今後も作って贈る喜びを広めていく。

(坂本永通子)



琉球手まり安木屋教室
毎週水曜 14:00〜16:00
那覇市牧志1-1-14 安木屋ビル5階
☎090-9783-8845
※琉球新報カルチャーセンターでも講座開催あり

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琉球手まり保存会
写真・村山 望
琉球手まり保存会
琉球手まり「花笠」
琉球手まり保存会
沖縄空手国際大会に寄贈する手まりを前に並ぶ宮城さん(左)、教室を共に支える安仁屋幸乃さん(中)と赤嶺恵子さん(右)
琉球手まり保存会
作品を前に記念撮影をする宮城さん(左)と義母の初子さん。約25年前
琉球手まり保存会
まん丸にした黒い土台に刺しゅう糸を刺し、模様を作り上げていく
琉球手まり保存会
手まりをかがる宮城玲子さん
琉球手まり保存会
手まり教室には30〜80代の受講生が通う
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