沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1709]

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「表紙」2018年01月25日[No.1709]号

ザ夫婦

ザ・夫婦(み〜とぅ) 42


ブーランジェリー・パティスリー いまいパン店主
今井 あいこさん 今井 陽介さん

種類豊富な町のパン屋さん

 食パンに菓子パン、ケーキに焼き菓子。たくさんのパンとお菓子が店内に並ぶ「ブーランジェリー・パティスリー いまいパン」。店主の今井陽介さん(41)と妻のあいこさん(40)は、豊富な品ぞろえでありながらパンを売り切れにしないというこだわりを持ち、毎日約80種類の商品提供を続けている。当初は売り上げが伸びず頭を悩ませることもあったが、開店5年が過ぎた現在、いつも客足が途切れない人気店に成長。海外でも認められた二人の技術で、地域住民を中心に多くの人に愛されている。



本場フランスで修業し沖縄へ

 実家を離れ他県の製菓専門学校へ進学。さらにフランスで修業を積むなど、似た道を歩んできた陽介さんとあいこさん。

 「子どものころ自分には長所がないと思っていたので、好きなことを見つけたかったのかもしれません。テレビで脚光を浴びていたパン職人に憧れて専門学校で学び、パン作りに夢中になりました」と陽介さん。

 あいこさんは高校時代に進路に迷い、お菓子作りが好きな自分を大切にしようと決めた。

 「パティシエになりたいと言ったら友達に驚かれ、両親には県外への進学を反対されましたが、思いを貫きました。住み込みでアルバイトしながら専門学校に通い、洋菓子店に就職後も十数時間労働が当たり前のつらい日々。でも夜中まで練習するなど無我夢中でした」

 専門学校で習得した知識や技術を基礎に、それぞれパン屋・ケーキ屋で働き実績を積んだ陽介さんとあいこさん。出会う前から抱いていたのが、フランスで修業するという同じ思いだ。本場の文化を知り、パンやお菓子がどのように生活に根付いているのか体感しながら技術を磨きたかったという。

 その思いを実行に移し、フランスで暮らした二人の生活環境は、恵まれている訳ではなかったが「大好きな国での修業が楽しくて、夢を見ているようでした。意識の高い人が集まり、活躍中の職人と知り合えるなど、ありがたい経験がたくさんできました」とあいこさん。陽介さんとの縁も、フランスで修業した日本人という仲間意識からつながった。

再会後にすぐ結婚!?

 陽介さんの確かな技量が評価されたのだろう。ほどなくフランスのバゲット・コンクールで3位に輝き、生活が一変。

 「住まいを提供され、高級レストランに連れて行ってもらえました」

 マレーシアの日本式パン屋の創業と事業展開に携わり、5年間で5店舗を立ち上げた。

 「暖かくて住み心地のいいマレーシアでやりがいを感じていましたが、だんだん寂しくなり沖縄でパン屋をやるのはどうかという知人の話に魅力を感じました。それで、沖縄出身の妻に会いにいったんです」

 当時あいこさんは東京・表参道の有名カフェでパティシエとして活躍していた。

 「沖縄に帰りたい気持ちもあり、修業時代やお互いの価値観を理解し合える夫と意気投合。再会して半年足らずで結婚しました。10年くらい会っていなかったのに、出店計画が勢いよく進んだんですよ」とあいこさんは振り返る。

地産地消がモットー

 2012年11月、いまいパン開店。場所はあいこさんの実家から近く、父親が金物店を経営していた場所。世界遺産・識名園が徒歩圏内だ。

 開店当時は売り上げが伸びず頭を悩ませたという二人だったが、安心・安全を心掛け地産地消にこだわってきた。

 「いつ来ても多くのパンやお菓子に巡り合える地域に溶け込む店にしたいと努め、徐々に浸透してきたと思っています。子どもたちから年配の方まで愛される店を目指します」と、あいこさんは力を込める。

 夫婦の会話はパンとお菓子のことばかりと語る陽介さんは、「2店舗目ができたので、次の目標はコッペパン専門店とお土産店を開くこと。最終的には、こだわり抜いた究極のパンを作りたいと思っています。何を追求するのかは、まだ秘密ですけどね」と将来のビジョンを語る。

 沖縄色あふれる手みやげ向けの焼き菓子は名菓として評価され、那覇市古島に今月新店舗をオープンした。湧き出るアイデアでおいしいパンとお菓子作りへのチャレンジを続ける夫婦の次の展開が楽しみだ。

(饒波貴子)



円満の秘訣は?

あいこさん: けんかになりそうだったら、悪い方が謝ること。私たち夫婦の場合は、夫が謝るパターンが多いですね。私は謝りません(笑)。
陽介さん: おいしいパンとお菓子を作るため、食べ歩きも仕事だと思っています。時間があると子どもを連れてレストランに行き、夫婦でおいしい料理を味わうのが楽しみです。

プロフィール

いまい・あいこ: 1977年生まれ、那覇市出身。高校卒業後に大阪の製菓専門学校に進学。お菓子職人として経験を積み、25歳からフランス・パリで修業。帰国後は、ハンガリーの老舗カフェ「ジェルボー」東京店の創業スタッフとして本場でお菓子作りを学び、伝統の味を日本で広める。2012年故郷の沖縄に戻り、陽介さんと二人三脚で店舗を営んでいる

いまい・ようすけ: 1976年生まれ、三重県出身。高校卒業後に東京の製菓専門学校に進学し、パン職人の道へ。フランス・パリで修業をした27歳のころ、現地のバゲット・コンクールに入賞。29歳の時にはマレーシアに渡り、日本式パン屋の開店事業に約5年間携わった。2012年3月にあいこさんと結婚し、11月に「いまいパン」をオープン

ブーランジェリー・パティスリー いまいパン
本 店:那覇市真地12-4  ☎098(836)3008
古島店:那覇市古島1-28-5 ☎098(911)1397
https://imaipain.com/
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今井 あいこさん 今井 陽介さん
出会ってから10数年後、交際を始め、結婚した今井陽介さんとあいこさん。沖縄に住むこと、そして店舗開業という目標が、二人の距離と縁を素早く結び付けたようだ。=ブーランジェリー・パティスリー いまいパンにて(那覇市真地)
写真・村山望
今井 あいこさん 今井 陽介さん
マレーシアでパン屋の創業に力を尽くした陽介さん(左から4人目)。右隣はオーナーのマハティール元首相
今井 あいこさん 今井 陽介さん
創業150年以上の歴史を誇るハンガリーのカフェ「ジェルボー」で、キャリアを磨いたあいこさん(中央の女性)
今井 あいこさん 今井 陽介さん
店内は種類豊富。こちらは人気のカスタードフレンチトースト
今井 あいこさん 今井 陽介さん
フロランタン風の塩せんべい「識名園るうまんぺい(浪漫餅)」。那覇市長賞・優秀賞、全国菓子大博覧会・名誉総裁賞を受賞
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