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[No.1684]

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「表紙」2017年08月03日[No.1684]号

ザ夫婦

ザ・夫婦(み〜とぅ) 18


Doucatty(ドゥカティ)
田原 琴子さん 田原 幸浩さん

やりたいことを自由に

 緑豊かな南城市佐敷字新里に工房を構える「Doucatty(ドゥカティ)」。田原幸浩(54)さんと田原琴子さん(49)夫婦が共同で生み出すカラフルでユニークなTシャツや手ぬぐいなどの布製品が人気を集めている。工房の名は方言の「ドゥーカッティ(自分勝手)」から。自分たちが作りたいものを作るという思いとともに、「みんなもっと自由でいい」というメッセージをこめた。「仕事と生活は切り離せない」と話す2人は、今日も工房で作品の制作に取り組んでいる。



自分たちのもの 作りたい

 幸浩さん、琴子さんが夫婦で営む工房「ドゥカティ」。

 芭蕉が生い茂る工房の庭には、豊かな色彩に染められた手ぬぐいが風にはためく。工房の扉を開けると、2人が制作したTシャツや手ぬぐい、ストール、ふろしきなどの布製品が並ぶ。沖縄の動植物をモチーフにしたイラストや模様で飾られた布は、今にも動き出しそうな生命感にあふれている。

 大胆で自由な描線、ビビッドな色彩を眺めていると、だんだん明るく元気な気持ちになってくるから不思議だ。

結婚後、仕事を共に

 幸浩さんは、京都府生まれ。子どものころから絵を描くのが大好きで、京都市立芸術大学のデザイン科に進学。卒業後は、大阪・東京で求人情報誌の制作の仕事に携わった。

 仕事は面白かったが、自分が興味のある絵を描きたいという思いが募り、2年半で退職。知り合いがいた沖縄に渡り、そのまま住み着いた。

 「とにかく絵を描きたかった。有名にならなくても、絵で暮らしていけなくても、描き続けられればいい」。幸浩さんは、さまざまな仕事で生活の糧を得ながら画廊に作品を持ち込み、年に1回のペースで個展の開催を続けた。当時の作品は油絵が中心だったが、声がかかれば雑誌のイラストレーションなどの仕事も引き受けた。

 琴子さんは、南城市生まれ。ファッションデザイナーに憧れ、県立芸術大学へ進学。そこでグラフィックデザインの仕事を知り、卒業後、東京のデザイン事務所に就職した。

 やがて雑誌のデザインの仕事に携わるようになり、ファッション誌や映画誌のデザインを担当。フリーのアート・ディレクターとして独立するまでのキャリアを積み重ねた。

 琴子さんは、県立芸大の学生時代から幸浩さんと顔見知りだった。帰省した時に近況を報告しあうといった仲だったが、2002年ごろ急接近。1年ほど遠距離恋愛を続け、03年に結婚した。

 結婚を期に、琴子さんは故郷・沖縄に戻った。幸浩さんが東京に出るという選択肢もあったが、「彼が慌ただしい東京で暮らすことが想像できなかった」と琴子さんは笑う。

 2人は結婚後、「パラダイスフィッシュ」というデザイン事務所を立ち上げ、専門学校のパンフレット制作などの仕事に携わった。だが、さまざまな制約の多い商業デザインの仕事に携わる中で「やっはり自分たちのものを作って出したい」との思いが強まり、06年、「ドゥカティ」を設立。自分たちで自由にデザインしたTシャツや手ぬぐいの販売を開始した。

「自分勝手」でいい

 「工房の名は方言の『ドゥーカッティ(自分勝手)』から。もともと僕は空気が読めなくて、自分のことばかり夢中になるタイプ。それで失敗もたくさんした。でも、僕の目から見ると、みんなもっとドゥーカッティしてもいいんじゃないかと思う」との幸浩さんの言葉を、琴子さんが「みんながもっと思うように生きられる社会がいい」とつなぐ。

 自由でありたい、好きなものを作りたいという2人の思いは一つ。この思いがあってこそ、ドゥカティならではの大胆な描線やユニークな色遣いの作品が生み出されるのだろう。

 幸浩さんと琴子さんは、毎日、朝から晩まで同じ工房で制作に励む。「けんかすることもあるけど、やっぱり気を遣わなくていいのが楽ですね」と琴子さんは頬を緩める。

 「自分たちの手で作ったものを自分たちで売るとお客さんの反応が直接伝わる。喜んでくれた時が一番うれしい」と口をそろえる2人。今後は少量制作だった大きな布や洋服にもっと取り組みたいと話す。

 「仕事と生活は切り離せない」と話す2人がこれから生み出す作品が楽しみだ。

(坂本永通子)



円満の秘訣は?

琴子さん:私自身が機嫌良くしていること。不機嫌になってくると円満ではなくなり、機嫌が良ければうまくいく。

幸浩さん:思い込みすぎたり、行き違いにならないよう、素直な気持ちで相手と接すること。

プロフィール

たはら・ことこ: 1967年生まれ。南城市出身。県立芸術大学美術工芸学部デザイン専攻を卒業後、東京でファッション誌や映画誌のデザインに携わる。03年、幸浩さんと結婚し、帰沖。同年、幸浩さんと共同でデザイン事務所「パラダイスフィッシュ」を立ち上げる。06年からは「ドゥカティ」を設立し、オリジナルTシャツや手ぬぐいなどの布製品の制作・販売を行っている

たはら・ゆきひろ: 1962年生まれ。京都府出身。京都市立芸術大学デザイン科を卒業し、大阪・東京で求人情報誌の制作を担当した後、来沖。さまざまな仕事をしながら絵を描き続け、年に1度のペースで個展を開催。03年、琴子さんと結婚し、同年デザイン事務所「パラダイスフィッシュ」、06年に「ドゥカティ」を設立。Tシャツや手ぬぐいに描く沖縄の動植物のイラストが好評を得ている

Doucatty(ドゥカティ)
南城市佐敷字新里740-1
☎098-988-0669
営業時間=10時〜17時
〔HP〕 https://www.facebook.com/doucatty/

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田原 琴子さん 田原 幸浩さん
田原 琴子さん、田原 幸浩さん夫婦は、南城市佐敷字新里の工房「ドゥカティ」にて日々制作に励む。芭蕉(バショウ)が生い茂る工房の裏庭には、2人が作ったカラフルな手ぬぐいが風にゆれていた
写真・喜瀬守昭
田原 琴子さん 田原 幸浩さん
Tシャツ、手ぬぐい、ストール、ふろしき、子ども服…。2人が作る作品には、いずれも豊かな色彩と躍動感ある絵柄にあふれている
田原 琴子さん 田原 幸浩さん
結婚当初、石垣島取材旅行にて
田原 琴子さん 田原 幸浩さん
減農薬・有機栽培の県産食材を使用した季節のジェラートは国内外の観光客に人気だ
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