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[No.1603]

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「表紙」2016年01月14日[No.1603]号

母娘燦燦

母娘燦燦 — おやこ さんさん — 40

パティシエ 金城 朝子さん 次女 内間 志奈子さん 三女 又吉 秋乃さん

笑顔をよりどころに 

 2015年2月に開店15周年を迎えた、宜野湾市のCafe & Cake Marronnier(カフェ & ケーキ マローニエ)。真っ白な外観の一軒家の店舗はアットホームな雰囲気であふれ、シンプルなケーキと焼き菓子が並ぶ。ヤギミルクを使った生キャラメルとチーズケーキは、コクがありながら優しい味で人気な定番のお菓子。オーナー兼パティシエを務める金城朝子さん(64)、受け継ぐ2人の娘・内間志奈子さん(37)と又吉秋乃さん(34)は、訪れる人たちの笑顔をパワーにお菓子を作り続けている。



主婦からパティシエに転身

パティシエとして20数年のキャリアを持つ朝子さんは、20代の若い内に結婚し3年おきに出産。4人の娘の育児と家事に励む、首里在住の料理上手な主婦だった。その生活が4女の幼稚園入園の頃に一変。PTAつながりの洋菓子店に頼まれ、アルバイトを始める。「自分の時間ができたので、ちょっと手伝う気持ちで引き受けました。社会に出て、視野を広げたかったんです」と語る朝子さん。卵割りから始める初心者だったが、材料の計量、かくはん、焼き上げなど工程を1つずつ習得。任されるたびに、ケーキ作りがどんどん楽しくなった。



ヤギミルクを原料に

 店舗移転に伴いその洋菓子店を辞める事になるが、9年在勤した朝子さんはケーキ職人の肩書きで転職。ホテルと有名カフェに勤め、さらにキャリアを磨く。菓子製造技能士の資格も得て、「ケーキ作りを続けたい」というぶれない心に気付いたそうだ。そして2000年、妹と共にカフェスペース併設のケーキ店「マローニエ」をオープン。デパートに勤めていた妹が接客し、朝子さんが作るケーキを販売するコンセプトで開業した。実母所有の外人住宅を店舗に使えるタイミングにも、後押しされた。「店の経営方法は、全く分かりませんでした。でも妹と2人なら何とかなる、やってみよう! と熱くなっていましたね」と振り返る朝子さんだが、環境を変え前進するチャンスが来たと肌で感じていたに違いない。多くの人が来店し、数年後には看板商品となる生キャラメルとチーズケーキが店頭に並んだ。朝子さんがヤギミルクに注目し、知人に紹介されたはごろも牧場(中城村)との縁で完成した自信の品だ。「ヤギミルクの紹介記事を読み、昔は家庭でヤギを飼い母乳代わりにしたほど栄養価が高いことを思い出した」のが発想のきっかけらしい。

 順調と思われた姉妹の店だったが、閉店を意識する苦しい時期が訪れたことも。「開店から5年が過ぎた頃、生活が厳しくなりました。妹は仕事の誘いを受け、共倒れになる前に店を離れ再就職。私1人で切り盛りすることになり、みんなが集まる場所を失くしてはいけないという思いだけで頑張ったんです」と朝子さん。誰もが気軽に来れて笑顔になる自分の店の存在に、改めて気付いたようだ。「絆を深め出会いが広がるこの場所を守りたい」朝子さんの真っすぐな気持ちが、娘たちに届く。

娘2人が母をサポート

 「母が頑張るなら家族で続けるしかないですし、その時期が自然に来た感覚でした。大変ながら今は楽しくやっています」と語ったのは、次女の志奈子さん。2010年に会社勤めを辞め、母の店を手伝うようになった。そんな志奈子さんは、店の味に自信を持っている。「生キャラメルはリピーターが多いです。これからもヤギミルクの商品を推してパッケージなど研究し、手土産に喜ばれるお菓子作りを目指します!」

 調理師学校を卒業した三女の秋乃さんは、10年のレストラン勤務を経て入店。仕事面の節目を感じた時、「姉妹から母を助ける立場だと言われ、母の年齢も考えた上で決めました」と、志奈子さん同様自然に足が向いたそうだ。「調理の道に進んだのはアルバイトがきっかけ。料理作りが大好き、という訳ではありませんでした。でも母の手料理の味を一番覚えているのは、多分私。たまに再現して作って、みんなで食べています」と笑顔を見せた。

 母あてのメッセージを聞くと、「ケーキの味や形はもちろん、マローニエのすべてを私たちに教えてほしい」と声をそろえた志奈子さんと秋乃さん。子どもの頃に食べた母・朝子さんお手製の料理とお菓子のおいしい記憶がある限り、その味を守り、みんなを笑顔にするスイーツ作りを引き継いでいくだろう。  

(饒波貴子)



プロフィール

きんじょう・あさこ
 1951年生まれ、宜野湾市出身。23歳で結婚し、24歳で長女を出産。4人の娘の母として家事に専念していたが、PTA仲間の誘いで1988年頃から洋菓子店でアルバイトを始める。9年間のバイト勤務でケーキ作りを学んだ後に、ホテル・レストランでパティシエとして経験を積んだ。2000年にマローニエを開店

うちま・しなこ
 1978年生まれ。短大卒業後、企業に就職。会社勤めを続けていたが、マローニエの人手不足を知り2010年に退職。本格的に手伝うようになる

またよし・あきの
 1981年生まれ。高校卒業後、調理師学校へ。調理師としてレストラン勤務を続けていたが、10年のキャリアを重ね転機を迎える。2011年にマローニエ入店

Cafe & Cake Marronnier(カフェ & ケーキ マローニエ)
宜野湾市喜友名1-10-5
☎ 098-892-3580
11:00〜20:00(月曜定休)



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カフェ & ケーキ マローニエ
パティシエの金城朝子さん(中央)を支える、次女の内間志奈子さん(右)と三女の又吉秋乃さん(左)。心を込めた手作りスイーツで、ファンを増やしている=宜野湾市喜友名の「Cafe & Cake Marronnier」  
写真・村山 望
カフェ & ケーキ マローニエ
開店時のパートナーだった妹(左)、親族と朝子さん(右)
カフェ & ケーキ マローニエ
長女の結婚式に撮影した、家族の集合写真
カフェ & ケーキ マローニエ
ヤギミルク生キャラメル。平成27年度商工部門コンテストで宜野湾市長賞を受賞した人気菓子
カフェ & ケーキ マローニエ
ヤギミルクチーズケーキ。ヤギ独特の癖はなく、生クリームとクリームチーズが溶け合いなめらか
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