沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1598]

  • (水)

<< 前の記事  次の記事 >>

「表紙」2015年12月03日[No.1598]号

母娘燦燦

母娘燦燦 — おやこ さんさん — 36

人間関係カウンセラー
藤野 都さん
藤野 千栄子さん

心癒やすお母さんのケーキ

 中城村北上原。東に眺望の開いた傾斜地に立つバプテスト教会。牧師の夫と子ども7人で牧師館に暮らす藤野都さん(62)は、「誰もが神様に愛されている存在」と考え、子育てに悩む母親の心に寄り添う。カウンセリングを本職にする一方、「食べた人が笑顔になるのがうれしい」と、誕生日やクリスマスに趣味のケーキ作りにプロ級の腕を発揮する。時に注文があると手伝いに駆けつけてくれるのが長男嫁の千栄子さん(37)。都さんのアドバイスで子育てが楽になったことも。嫁と姑、互いのかかわりを祝福し合い、愛情いっぱいのケーキを作る。



子育てを楽にするメッセージ

 29年前の夏、藤野都さんは牧師である夫の久美次さん(69)が本島中部の教会に赴任するのに伴い、6人の子どもたちと兵庫県から移住した。

 その教会が11年前に立ち退きとなったため、当地に移転し一家は教会の3階にある牧師館で暮らしている。久美次さん手作りの家具を備えた室内は、カントリーハウスのような温かみが感じられる。「夫は日曜大工が得意で、棚や暖炉が欲しいと言えば作ってくれる。11年の間に少しずつ室内は整っていきました」と、丁寧な暮らしをつづる牧師一家の日常を語る。

 夫婦は兵庫県の教会で出会い、20歳の都さんは神学校の学生だった久美次さんと結ばれた。6人の子どもを育てる中、誕生日やクリスマスを都さんは手製のケーキで祝福し、教会の活動をも務めてきた。



出会いを抱きしめて

 ケーキや焼き菓子など300種に及ぶ都さんのケーキ作りの原点は、アメリカ人の宣教師婦人から習った簡単なバナナケーキだ。繊細な味を極めるスイーツと異なり、礼拝の後やバザーなどに喜ばれる″どこか懐かしいお母さんのお菓子〟である。ケーキ作りに拍車がかかったのは、長男が勤めていたメキシコ料理店で「ママのケーキ」を出品する機会を得たこと。ホームメードのケーキに商品価値が付き5、6年続いたそのケーキ作りのサポート役に登場したのが長男嫁の千栄子さんだ。都さん同様、お菓子作りが好きでクリスマスの礼拝後、300個ほど用意するアイシングクッキー作りに千栄子さんのサポートは欠かせない。

 「長男に初めて僕の彼女ですと紹介されたとき、思わず千栄ちゃんを抱きしめていました」と、千栄子さんとの出会いを語る都さん。千栄子さんを心から祝福したいと思ったらハグしていたという。「千栄ちゃんが藤野家に嫁いでくれてよかった」と聞いてとてもうれしくて涙が出たと千栄子さん。

 嫁と姑、どんな人も神様に愛されて共に存在するという考えに生きる都さん。存在を包み込むような優しさが、ケーキを作る2人の呼吸があった自然な動作ににじみ出る。

誰もが受け入れられている

 都さんのケーキは、自身が主宰するカウンセラークラスの生徒に好評だ。辛さを抱えていてもケーキを食べると笑顔になってくれるのがたまらなくうれしいという。そんな生徒がいて、ケーキ作りに熱が入るが、本職はカウンセラーと言い切る。

 都さんがカウンセリングを始めたのは自身の体験からだった。「来沖当時、牧師の奥さんは嫌だと思っていました。教会の関係者とうまくかかわりが持てない。これは変だな、わたしがおかしいのかなと気づいたのです」。牧師夫人は止められない、人間関係をうまく結べなくて、カウンセリングの集中セミナーに参加し、尊敬する牧師のカウンセラーにも教えを請うことに。

 カウンセラーを始めて間もないころは、思春期にある相談者の悩みに振り回され自身の未熟さを思い知ったという。そして、幼少時に両親を亡くした都さんは自身の体験に突き当り、「わたしという存在は誰かに喜ばれているのか」と自問した。そのとき「神様に愛されているんですよ」という師の言葉に、受け入れられていることを知ったという。そのように、自身の存在や子どもとのかかわりに悩む母親に受け入れることを伝えたいという。

 カウンセラーとしてのアドバイスは千栄子さんを子育ての辛さから解きほぐしてくれる。「頑張らなくてもいいのでは。すべてを捨てて今日は寝なさい。明日でいいじゃない」と言われて心が楽になったと千栄子さん。よきアドバイザーと心強いサポート役。互いになくてはならない存在だ。

(伊芸久子)



プロフィール

ふじの・みやこ
1953年生まれ。兵庫県出身。1972年神学校の学生だった藤野久美次さんと結婚。埼玉県・愛知県の教会を経て1987年一家で来沖。子どもは6人。住居は、中城村の恵みバプテスト教会の牧師館。アメリカ人宣教師婦人から習ったバナナケーキを手始めに、長男が勤めたメキシコ料理店にケーキや焼き菓子を卸したことも。カウンセリング歴25年。「資格とはクライアントが与えてくれるもの」と師である牧師に励まされ、不登校児童や子育てに悩む母親のカウンセリングクラスを運営する。

ふじの・ちえこ
1978年生まれ。2001年藤野極(きわみ)さんと結婚。1児の母。初めて藤野家を訪れた際、都さんにハグの歓迎を受ける。都さん同様、ケーキ作りが好きで、誕生日・クリスマスに注文を受けると名サポートを発揮する。クリスマスには300個のアイシングクッキーを作り教会でもてなす。



このエントリーをはてなブックマークに追加



人間関係カウンセラー
クリスマスケーキ、クリスマス定番のアイシングクッキー、スノーボウルを作る藤野都さん(写真左)と長男嫁の千栄子さん。都さんはプロ級の腕前だが、「千栄ちゃんの手助けがないと作れない」と笑う
中城村北上原
写真・村山 望

人間関係カウンセラー
1987年那覇港に着いた藤野さん一家。アメリカ人宣教師に招かれ、宜野湾市のバプテスト教会に赴任した
人間関係カウンセラー
1972年兵庫県赤石の教会で挙式した久美次さんと都さん
人間関係カウンセラー
末娘・みつ恵さんの披露宴。都さん手作りのウエディングケーキで2人を祝福
人間関係カウンセラー
教会創立30周年を記念して集う藤野さん一家。後列右から2番めが千栄子さん
>> [No.1598]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>