沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1515]

  • (土)

<< 前の記事  次の記事 >>

「表紙」2014年04月24日[No.1515]号

RED OKINAWAカラー 4

OKINAWAカラー 4 (RED)(2014年04月24日掲載)

美しい金魚育てたい  ランチュウ愛好家・金城清志さん

 ゆらり、ゆらり。水中を舞うように泳ぐ金魚。フナの突然変異の中から赤いものが品種改良されてきた。「金魚は美術工芸品。ただ育てるのではなくて美しさも求められます。同じ親から生まれても育て方によって変わってきて、それが面白い」と話すのは、金魚の一種「ランチュウ」を40年にわたり育てる金城清志さん(63)=那覇市。前年生まれた金魚から毎春、たくさんの卵がふ化。10月の品評会に向けて手塩に掛けて育てていく。金城さんと金魚の1年がことしも始まった。



最高レベルの金魚へ

 世界中で愛されている金魚。頭部や胴体、ヒレの形によって細かく種類が分かれている。鑑賞方法も種類によって違う。横から見て楽しむ金魚もいれば、上から見るものもいる。

 金城清志さんが情熱を注ぐランチュウは背ビレがなく、俵型の胴体、頭部に肉瘤があるのが特徴。尾は短くいかにも泳ぎにくそうなのに、フリフリと軽やか。その姿を上から見る。



 旅客船などで調理師をしていた金城さん。航海で家を空ける時は家族に金魚の世話を任せてきた。仕事を退職した現在は自宅の屋上に220リットルの水槽が9個。最も多い時はこの2倍あった。水換えは多い時には2、3日に1回。「水道代が2万円もかかって、水道漏れしていませんかって聞かれたこともありますよ」と振り返る。

 水槽では毎春、ベビーラッシュにわく。うれしい反面「最初の1カ月は本当に手がかかるよ」と話す。金魚好きでも「手がかかる」と言う作業とは?

 ふ化して2、3日すると最初のエサやり。ゆで卵の黄身を丁寧にこして、水に溶いて与える。数日すると今度はエビ(プランクトン)。卵を乾燥させたものを海水に漬けて、一晩酸素を送り続ける。するとエビがふ化。その生きたエビを1カ月ほど与える。金魚の離乳食だ。

 稚魚は体の赤みがなく、メダカの赤ちゃんのようだ。2カ月近くすると、指の太さ程度になり、体も赤くなる。この頃からほしがる人に譲る。「もう市販の金魚のエサも食べられるからね」と金城さん。

 数十匹を残し、10月に東京で開かれる品評会に向けて大切に育てる。「でもなかなかうまくいかなくてね。前に50匹の中で最高と思っていたのが野良猫に持っていかれました」と笑う。

 そして10月。えりすぐりの2、3匹を、全国から200匹もが集まるランチュウの品評会に出す。目指すは最高位の「大関」だ。過去に一度だけ2番手の「西の大関」を取ったことがある。「始めたばかりの若手が続けて上位を取ることもある。センスが必要なんですよ」

 面白いのは200匹もいて、誰も自分の金魚を間違えないという点だ。「毎日見ているから、ウロコの模様からすべて分かるんです」と説明した。



 金城さんの自宅には金魚好きが集まってくる。そのキャリアはまちまちだ。

 沖縄市に住む山城和浩さん(41)は飼い始めて5年ほど。江戸時代に琉球を経由して日本に渡った「琉金」をはじめ、デメキン、アズマニシキなど8匹を飼う。特に琉金は13センチほどの大きさで見事だ。山城さんは「私は品種に関係なく、いろいろな金魚を飼うのが楽しいです。子どものころから興味はあったけど、本格的に飼いだしたのは5年前ですね」と話す。

 今はいないが、以前はオランダシシガシラも飼っていた。3年ほど前、オランダシシガシラの愛好会に所属していた時に金城さんと知り合った。それ以降、金城さんの家を時々訪問し、飼い方などを教わっている。金城さんのように繁殖させるのが目標。「最初は繁殖できたんだけど、タイミングがなかなか合わない。今はオスばかりなので無理ですね」と笑う。

 「そろそろ品評会で優勝したいな」と語る金城さん。山城さんが「私はまだ品評会に出すほどではないけれど、金魚ファンが増えて、県内で品評会ができたらいいですね」と話す。金城さんも「そうだね、愛好家が増えたら交流できるよね」と応えた。

 「金魚はあきないんだよね」と二人は声をそろえる。水温は、産卵床は、エサは…と続く会話。金魚談議はつきることはない。



岩崎みどり/写真・喜瀬守昭(サザンウェイブ)



このエントリーをはてなブックマークに追加



ランチュウ愛好家
昨年生まれたランチュウを眺める金城清志さん(右)と山城和浩さん。頭部やヒレ、背中の形、泳ぎ方などが美しさのポイントになる=那覇市
ランチュウ愛好家
山城さんの琉金。尾が長いのが特徴だが、ショートテールと呼ばれるこの種類は短い
ランチュウ愛好家
1週間ほど前にふ化したランチュウ。このころはフナと同じ黒色で金魚の赤みはない
ランチュウ愛好家
金城さんのランチュウ。鑑賞には金魚の赤が映えるように白いオケを使う
ランチュウ愛好家
金城清志さんの自宅屋上に並べられた水槽を見ながら金魚談議をする金城さんと山城さん
>> [No.1515]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>