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[No.1479]

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「表紙」2013年08月08日[No.1479]号

あちこーこー 19

アチコーコー 19(2013年08月08日掲載)

アンモナイト収集家の土橋浩一さん

命の奇跡 化石で学ぶ

 約4億年前に地球に誕生し、約6千550万年前に絶滅したアンモナイト。その姿は化石として残り、現代を生きる私たちに太古の昔から絶え間なく繰り返されてきた生命の誕生と絶滅について伝えている。名護市に住む土橋浩一さん(71)は、十代のころからアンモナイトの化石に魅せられ、日本各地で採取してきた。ことし、コレクションの一部を県立博物館に寄託。「化石を通して、今の時代に人間として生きている奇跡を、子どもたちに感じてもらいたい」と話している。

「地球の財産」伝えたい

 アンモナイトの化石を集めている土橋浩一さんは東京都出身。3年ほど前、病気を機に会社経営から離れて沖縄に移住した。沖縄は石灰岩が多く、化石の多くは雨で溶けてしまうという。そのため、土橋さんは、教育機関などと連携し、沖縄の子どもたちが化石に触れる機会をつくりたいと考えている。

 服やプラスチック、石油など化石燃料に頼っている現在の生活、175万種類いる生物の中で人間として生まれてきた奇跡。「私自身、化石を通していろいろなことを学んできた。それを子どもたちに伝えたい」と目を輝かせる。

数億年前と対面

 化石に出合ったのは中学生のころだ。学校の地理歴史クラブに所属し、鎌倉や逗子の海岸で石などを採取する学生だった。夏休みの研修旅行で、四国や山陽を巡った時のことだ。瀬戸内海の小さな島の寺の住職が所有する「標本室」に入れてもらい、部屋の中でアンモナイトやカブトガニ、オウムガイなどの化石を初めて見た。

 同級生たちが部屋を出て行っても、土橋さんはその場を動くことができなかった。「それまで、何億年も前の時代について教えられたことがなかった。4億、5億年前のものが化石として目の前にあるというのをどうとらえたらいいのだろうかと思った」と振り返る。「本当に魂を奪われてしまった。それから化石にはまった」

 高校、大学ではスポーツや音楽などの活動をするものの、化石への関心はとぎれず、機会があれば化石探しに出掛けた。社会人になってからは、仕事で訪れた日本各地で化石を探した。その中で、国内でアンモナイトの宝庫として有名な北海道三笠を知り、足しげく通うようになる。同市立博物館とも付き合いを深め、共に調査をするようになると、本格的にアンモナイトに興味を持った。

 殻の巻き方の違い、複雑で美しい殻の模様、水圧から身を守るために施された体の構造など、アンモナイトの「個性」に魅了された。「一口にアンモナイトといっても、進化していて段々と形も変わってくる。年代が分かる化石といわれる」と、うれしそうに話す。

展示会に2千人

 実は、沖縄に引っ越す時に、かなりの化石を処分した。「無料」と書いて玄関先に置いたり、捨ててしまったものもある。「こんな重い物は持ってこられないと思った。もったいないことをした」と悔やむ。

 残ったアンモナイトは170点ほど。そのうち約70点を展示し、ことし5月の連休中、名護博物館で「化石展〜アンモナイトがとまらない〜」を開催した。わずか2㎜の小さなものから、全体が90㎝にもなる巨大なものの一部まで展示、土橋さんは解説役を務めた。3週間余りで約2千人が来場し、大盛況だった。

 化石展終了後、土橋さんは展示した約70点を県立博物館に預けた。5月の新収蔵品展でも紹介されている。いずれは名護博物館に戻して、正式に寄贈する考えだ。

 「化石は地球の財産」と話す土橋さん。化石を通して、地球誕生から46億年という歩みや、生命あふれる地球と宇宙の関係など、壮大なスケールを感じとってきた。この学びを次の世代に伝えようとしている。「アンモナイトの時代から人間にどうつながっているのか。そして、今は宇宙にも行ける時代。それを伝えて、子どもたちに夢を持たせたい」。アンモナイトは今後、ますます輝きを増していく。

岩崎みどり/写真・呉屋慎吾

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アンモナイト収集家の土橋浩一さん
土橋浩一さんとコレクションの一部であるアンモナイトの化石。半分近くが県立博物館にある=名護市
アンモナイト収集家の土橋浩一さん
土橋さんが作ったアンモナイト装飾品。殻の模様が美しい
アンモナイト収集家の土橋浩一さん
沖縄で見付けた、ウミギク(手前から時計回りに)、黒サンゴ、浮くための袋を出したままのルリガイの化石
アンモナイト収集家の土橋浩一さん
名護博物館で行われた化石展。コレクションから70点ほどが展示された(同館提供)
アンモナイト収集家の土橋浩一さん
 つちはし・こういち 1942年生まれ、東京都出身。
3年前から名護市で、妻・加代子さんと二人暮らし。名護博物館友の会メンバー。
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