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[No.1405]

  • (金)

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「表紙」2012年03月01日[No.1405]号

沖縄を食べよう 5

沖縄を食べよう 5(2012年03月01日掲載)

再スタートへ情熱燃やす
金城 義明さん(23歳)オクラ、インゲン(豊見城市)

 小学生からの”夢“が叶い、県内有数の野菜産地である豊見城市保栄茂地区で、新規就農者として第一歩を踏み出した金城義明さん(23歳)。昨年5月の台風2号によるハウスの損壊や収入の激減など幾多の困難に見舞われながらも、再スタートを期し、ハーブ農家の収穫を手伝い新たな取り組みを始めた。今後は島尻マージの特徴をいかしオクラやインゲン、トウガラシの栽培に情熱を燃やす。

 子どものころから夢かなう

 サラリーマン家庭に育った金城さんが農業に興味を持ったのは小学4年生の時。国家公務員である父親の転勤で東京都新宿区内の小学校に通っていたときのこと。以前から植物への関心が高く、自宅の庭にゴーヤーを育て、収穫したことがきっかけだった。

 自分がまいた種が芽を出し、成長する過程や日々の管理、実を収穫しそれを調理して家族で食べたときの感動を味わった。

 「ゴーヤーは苦かったけれど、すごくおいしかった」と当時を振り返り、「自然に触れることや生き物を育てることに興味がわいてきた。その時から農業を意識するようなった」と笑顔をみせた。

 中学校に入ると職業に対する具体的なイメージを持つようになった。卒業後の進路として選択したのは農業高校。農家への道を目指し県立南部農林高校に入学した。そこで作物を生産する喜びや楽しさに触れ、農業を将来の仕事として真剣に考えるようになった。

 同校卒業後はさらに本格的に農業を学びたいと、沖縄県立農業大学校に進学。野菜コース園芸家庭野菜専攻で施設を利用した出荷、栽培や露地栽培の生産技術と経営管理の習得にも励んだ。

 県立農業大学校では卒業生に最短1年以上の研修を義務付けているため、金城さんは那覇市首里の実家に近い、豊見城市の農家を研修先に選んだ。

 同市はマンゴーやパパイヤの拠点産地して認定されているほか、多くの野菜を生産し、県内外に出荷している。若手からベテランまで多くの農家が付加価値の高い高品質の作物作りに取り組んでいる地域。

 農業大学校では専門家の指導の下、理論や実学を学んだが、研修先の農家ではその土地にあった栽培方法や環境に合わせた対応を強いられるため戸惑いもあったという。

 「学校で学んだことが基礎として役立っていますが、実際の現場では状況が全く異なるので、それに合わせた対応が必要です」と金城さん「沖縄本島南部と北部では土壌が違うため、土づくりや肥料を加える割合も異なる。すべて勉強です」と話す。

 金城さんは現場での研修を重ねながら、ハウスや露地での栽培技術を学んだ。

 昨年1月、念願かない3棟のハウスを取得。オクラやトウガラシなど栽培を始めた。作物作りの基礎である土壌作りから肥培管理など一人こなし、順調にスタートした矢先のことだった。

 昨年5月沖縄本島付近に一時停滞し、猛威を振るった台風2号の影響で金城さんのハウスが一部損壊した。「大型台風」への対策を考慮した構造にもかかわらず、3棟あるハウスの1棟のビニールが吹き飛び、柱も大きく曲がった。全体も大きく傾いた。現状を目の当たりにした金城さんは言葉を失い「夢と希望」が一瞬に吹き飛んだ。

 さらに追い打ちをかけたのは損害補償のめぐる規定だった。金城さんは作付面積が規定に満たなかったため「災害補償」を受けていない。

 現在、収入がほとんどなく、研修先のハーブ畑での収穫を手伝い生計を維持している。収穫の合間をみて、ハウスの補修を行う。3月から4月には「再スタートしたい」とビニールの張り替えや鉄柱の修理、土の入れ替えなどすべて一人で行う。補修を終え、植え付けが可能となったら再びオクラ、インゲンの生産に取り組む。

 池原雅史/写真・國吉和夫


再スタートへ情熱燃やす
露地栽培で収穫したハーブ。さやかな香りが漂う
再スタートへ情熱燃やす
プロフィール
 金城義明(きんじょう・よしあき) 1988年那覇市生まれ、南部農林高校卒業、沖縄県立農業大学校卒業。豊見城市内の農家で約3年間の実地研修を経て、昨年新規農家として独立。インゲンやオクラの生産に取り組む。
再スタートへ情熱燃やす
☆編集部のおすすめレシピ☆
 消化作用や鎮痛作用が高い。アルカリ度が高いので酒を多く飲まれる人、腸の弱い人にはハーブティー、彩り鮮やかな旬の果物がたくさん入ったフルーツもおすすめ。サングリアは①水を沸かして砂糖をとかし、シロップを作る・レモン皮をよく荒井水気を拭き取り、1センチくらいの厚さに切る②ワインに①を入れ1日おく③冷やした②にハーブの葉を入れ、色と香りを楽しむ。
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