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[No.1451]

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「島ネタCHOSA班」2013年01月24日[No.1451]号

沖縄のサクラは1種類?

 沖縄は、日本一早い桜の季節ですね。沖縄では、「寒緋桜(カンヒザクラ)」しか聞きませんが、県外のように他の種類の桜はないのでしょうか?(浦添市 Tさん)

沖縄のサクラは1種類?

 サクラ、日本人が愛してやまない花ですね。インターネット上にも、全国の「サクラ愛好家」が、投稿写真でさまざまな種類を紹介する「○○桜図鑑」が花盛り。カンヒザクラは「緋寒桜(ヒカンザクラ)」とも呼ばれますが、「彼岸桜(ヒガンザクラ)」と区別するため、現在は前者で呼ぶことが主流のようです。早速「沖縄」で検索してみると、気になる情報を2件見つけました。

離島に自生種

 まずは久米島町の名を冠した「クメノサクラ」。クメノ〜の調査に同行した元役場職員・仲宗根秀吉さん(65)に話を聞きました。

 「特徴は、木が細めということと、花がカンヒザクラに比べ白っぽいことです。そして、花弁は1片ずつ散るんですよ」。花全体がポトッと落ちるカンヒ〜とは違いますね。

 「民家などにもあって、私たちには身近な存在ですよ。もともと自生種だったのを、きれいなので、身近な所に接ぎ木で増やしたんじゃないかと思います」

 特に意識せず、彼岸の時期に咲くため、以前は「ヒガンザクラ」と呼んでいたと仲宗根さん。「1995年ごろ、岩手の研究者が久米島を訪れて初めて『クメノサクラ』と呼ぶようになったんです」

 しかし結局、どこに自生していたかルーツは分からなかったそう。最近になり、大本は中国ではないかといわれているようですが、まだまだなぞの解明は続くようです。

 また、国の天然記念物に指定されているのが石垣市の「荒川のカンヒザクラ自生地」。八重山毎日新聞社記者の辻本順子さんによると、「旧林道を30分ほど上った滝の周辺に約300本自生しているんですが、道も整備されていないので、簡単には見ることができない場所にあるんですよ」とのこと。こちらも大本は中国か台湾との説が有力だそうで、日本で唯一のカンヒザクラの自生地とのことで1972年に天然記念物に指定された貴重なサクラです。

琉大になぞの木

 さらに調査員の元に情報が。「琉球大学内にソメイヨシノがあるらしい…」。同大学資料館・風樹館を訪ね、博物館学芸員の佐々木健志さんに話を聞きました。うわさの桜は同館玄関前にあり、花は見当たりません。

 「これはソメイヨシノではないと思います。ただ、カンヒザクラとも様子が違うんですよ」

 過去の開花写真を見ると、カンヒ〜の赤に近い濃いピンク色を思わせる花弁と、白っぽい花が混ざっています。

 「この木は、カンヒザクラとオオシマザクラの交配種じゃないかと思うんですが、DNA鑑定をしたわけではないので、正確には分かりません。年によって違いますが、9月と2月頃開花するんです。ヒラヒラと花びらが舞って、とても美しいんですよ」

 クメノ〜に多少似た散り方です。よく映像などで見る光景が浮かびますね。どうしてこの木は大学に植樹されたんでしょう?

 「おそらく、1977年から84年にかけて、キャンパスが西原に移転した時期だと思いますが、誰が、なぜ植えたのか分からないんですよ。ただ、自然交配は考えにくいので、試験的に植えられたのかもしれませんね」

 カンヒ〜以外の桜も、少数派ながら沖縄各地で愛らしい花を咲かせているようです。さあ、今年も、日本一早いサクラの開花を楽しみますか。

沖縄のサクラは1種類?
クメノサクラの花(提供:久米島町)
沖縄のサクラは1種類?
自生する石垣のカンヒザクラ(提供:八重山毎日新聞社)
沖縄のサクラは1種類?
風樹館の入り口にある=琉球大学
沖縄のサクラは1種類?
風樹館の入り口にある=琉球大学
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