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[No.1385]

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「島ネタCHOSA班」2011年10月13日[No.1385]号

出会いの握手、沖縄だけ?

沖縄の人は人に会ったら「まず握手」をするのをよく見ます。特に年配の男性に多いような気がします。握手をする習慣がある(あった)のでしょうか。(2011年10月13日掲載)

出会いの握手、沖縄だけ?
那覇市(40代、女性)

 確かによく見ますね。おじさん同士が道で偶然会って「やあ、やあ」と肩をたたきながら握手をしている風景。

 心理的な距離感

 「よく握手をしている」ウチナーンチュ、実際はどうなのだろうか。

 調査員は周りにいる男性に聞いて回った。「僕は握手はしないけれど、年配の人はするね。南米帰りの影響かな。外国の人の影響か」。ある企業の営業部員は「仕事で、普通に握手はしますね」それから仕事がうまくいくってこともあるかも。今年の春、東京に転勤になった人は「女性に握手をしようとしたら、いやがられたなあ」と笑う。やはり、沖縄だけの習慣なのか。

 かりゆし長寿大学の講師で沖縄の慣習などに詳しい崎原恒新さんは「握手の”条件“として頻繁に会う人とはしない。たまにしか会わない人」と述べる。移民県の沖縄、その移民が帰国し身につけた習慣で握手をする人が多いのではという説には「それは難しいですね。まず、引き揚げてきた移民というのがそんなにいません。ですから、南米帰りの影響はないと思います。むしろ米軍の影響の方が強いと思います」と話してくれた。

 握手は、ある人にあった時に自然に出てくる行為だ。住んでいる場所、時代の影響などの影響はあまり関係なく「この人と近づきたい」という思いが出てくるのだろう。

 「心理的な距離感かな」と話すのは、「オキネシア」代表取締役の金城幸隆さん。オキナワンテイストの菓子や香水を持って海外で営業展開をする時は握手から始まる。外国人も手を差し伸べてくるが、相手が女性の場合は握手はしないという。また相手の女性も握手をするような行為は見せない。プライベートでは、仲のいい友人、仕事の付き合いで親しくなった人と会ったときは、旧交を温めあうために手を差し伸べる。

 ウチナワーンスピリット

 「いつごろから握手をしていたのかな。自分でも気付いてないけど、仕事で(沖縄の)外に行くときは握手しますね」と語るのは「久米島の久米仙」の営業部長、宇江城昌吾さんだ。宇江城さんは自分でも言うように、いつも握手をする。国内の見本市で県外の人と握手をすると、とまどう人と喜ぶ人がいる、と言う。ちなみに喜ぶのは体育会系の人だそうだ。

 宇江城さんはこれまでに海外13カ国に琉球泡盛の販路拡大を目指して「久米仙」をPRしてきた。その時も始まりは握手だ。特に外国人は習慣になっている行為なので、宇江城さんの差し出す手にも力が入る。「それと僕は、握手だけでなく体をタッチしたりするクセもあるんですよ」と付け加える。

 世界各国の食品関係者らが集まる見本市で、握手をし体にタッチしたのがきっかけで、仕事のほかに私生活でも交流が続いている人たちがいるという。

 ロンドンの見本市で知り合いになったイギリス人は、見本市の期間中、毎日「久米仙」のブースに顔を出していた。あとで理由を聞くと「ここだけだよ。毎日顔を出してもいつも丁寧に応対してくれたのは」と打ち明けてくれたという。現在、スコットランドで日本食の店を開業しているが、そこにはもちろん「久米島の久米仙」がおかれている。

 「ウチナーンチュは知らない人が来ても、まず歓迎を表す。そういうウチナワーンスピリットというのが握手に出ているのではないか」と宇江城さんは話す。

 言葉は通じなくても、手を差し伸べれば、気持ちや心が通じ合うような気がする。沖縄の人に「握手をする人が多い?」の答は簡単には出ない。でも、宇江城さんが言うように、握手は「誰でも歓迎」するウチナーンチュの性格を表しているのでは。


出会いの握手、沖縄だけ?
知り合いに会うと「元気だったかー」と肩をたたきながら握手
(写真はイメージ)
出会いの握手、沖縄だけ?
海外の見本市で、友人とポーズをとる宇江城昌吾さん。握手から仲良くなった(宇江城さん提供)


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