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[No.2028]

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「表紙」2024年03月21日[No.2028]号

出会いに導かれた音楽人生
テノール歌手 沖縄県立芸術大学 音楽学部 教授
五郎部 俊朗さん

中学教員から歌手、大学教授へ

 五郎部俊朗さんは、中学校の教員から声楽家に転身、イタリアで研鑽を積み東京で歌手として活動した という異色の経歴を持つテノール歌手。深い情感のこもった歌声で、クラシックやオペラはもちろん、イタリア 歌曲カンツォーネ、日本の唱歌や歌謡曲まで幅広い歌を、朗々と歌い上げる。2012 年から沖縄県立芸術 大学に赴任、後進の指導に力を注いできたが、この3月で退任。沖縄への感謝を込めて、30 日(土)に那覇 文化芸術劇場 なはーとで「我が心のうた」と題し、日本の名歌を集めたリサイタルを開催する。

 テノールとは、男声の最高 音域。高く朗々とした五郎部 さんの歌声には、深い情感が 込められており、心に優しく 染み渡るように感じられる。

 専門であるクラシックの歌 曲やオペラのほか、カンツォー ネ、また「赤とんぼ」など日本 の唱歌を収録したCDも発 表し、歌の魅力を伝えている。

可能性に挑戦

 「自分がクラシックの歌手 になるとは思っていませんで した」と五郎部さん。

 出身は北海道旭川市。歌 は好きだったが、クラシックで はなくフォークに夢中になり、 高校生のころはアマチュアバン ドで活躍。全国コンテストで3 位を獲得した。同市出身のバ ンド・安全地帯と同期で、音 楽イベントでよく顔を合わせ ていたという。

 しかし音楽で身を立てる 自信はなく、北海道教育大 学に進学。 音楽の先生になる ため勉強する中で、声楽の魅 力に目覚めた。

 公立中学校の教員を3年 務めた後、オペラ歌手を志し 退職。教員在職中に札幌交 響楽団と共演した時、指揮者 の尾高忠明さんに歌を認め られ、「もしかしたら、自分で も気付いていない可能性があ るんじゃないか」とチャレンジ を決意したという。

 藤原歌劇団総監督だった 故五十嵐喜芳さんにも「声に 光るものがある」と励まさ れ、1986年、 27 歳で旭川 からイタリアへ。オペラ歌手の 研鑽を積み、欧州各地の国際 コンクールで数々の入賞を果 たした。 4年後の 90 年に帰 国するや、藤原歌劇団のオペ ラで主役に抜てき。 プロの声 楽家としての人生が開けた。

 「好きなことをやっていた だけなのに、その時々に自分 の人生を決めるような出会い があって、プロの音楽家になる ことができた。 運がよく、恵 まれた音楽人生」と感謝の思 いを口にする。

沖縄での12年間に感謝

 その後、東京で歌手として 活躍していた五郎部さんに転 機が訪れたのは、2012 年。 沖縄県立大学の教員を 務める知人から、公募を紹介 され、応募書類を提出したと ころ、一発で採用に。伯父(母 の兄)が沖縄戦で戦死し、最 期を迎えた場所が県芸と近 い弁ヶ岳であったことにも、縁 を感じたという。

 

 53 歳で初めて就任した大 学の教員生活には苦労もあっ たが、先輩から受け継いだも のを次の世代に伝えていくの が使命と思い、後進の指導に 励んだ。

     *     

 この3月で退任を迎え、沖 縄をあとにする五郎部さん。 12 年間を過ごした沖縄に感 謝を込めて、 30 日(土)にな はーと大劇場でリサイタルを 開催する。

 クラシックの歌唱法をベー スにしつつ、歌うのは日本の 名歌。「荒城の月」「月の砂漠」 などの唱歌から、「青い山脈」 「蘇州夜曲」といった往年の歌 謡曲、近年の「糸」「いのちの歌」 まで、名曲を披露する。「芭蕉 布」「涙そうそう」など、沖縄 生まれの歌も織り交ぜる。

 歌の合間には、得意のトー クも展開。「初めてクラシック のコンサートに来る人でも楽 しめる、楽しいリサイタルで す」と来場を呼び掛ける。

(日平 勝也)



五郎部 俊朗さん

五郎部俊朗リサイタル
「我が心のうた 沖縄への感謝を込めて~日本の名歌を歌う~」

3月30日(土) 開場13:30/開演 14:00
那覇文化芸術劇場 なはーと 大劇場
※未就学児の入場はご遠慮ください
全席自由 2000円(当日500円増)
(プレイガイド デパートリウボウチケットカウンター、コープあぷれプレイガイド)
問い合わせ ☎090-9782-4501(糸数)



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五郎部 俊朗さん
教授を務める沖縄県立芸術大学 音楽 学部の大合奏室で、グランドピアノの 前に立つ五郎部俊朗さん。男声の最高 音域であるテノールの歌声は、聞く人 の耳に深く優しく響く
撮影協力・沖縄県立芸術大学
五郎部 俊朗さん 五郎部 俊朗さん
五郎部俊朗テノールリサイタルにて (提供写真)
五郎部 俊朗さん
イタリアから帰国後、藤原歌劇団で主役に 抜てきされたオペラ「チェネレントラ」の舞 台風景。中央が五郎部さん(提供写真)
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