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[No.1431]

  • (金)

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「表紙」2012年08月30日[No.1431]号

沖縄を食べよう 21

沖縄を食べよう 21(2012年08月30日掲載)

大城 勇貴さん(21)

キーツマンゴー(豊見城市)

将来性に夢託す

 県内外で、高い評価を得る沖縄産マンゴー。見慣れた真っ赤なマンゴー・アーウィンとは品種が違い、大玉で、熟しても皮が緑色、アーウィンよりも糖度の高い「キーツマンゴー」は、豊見城市も力を入れる注目のフルーツだ。栽培に携わる大城勇貴さん(21)は、「まだまだ1年生です」と表情を引き締める。贈答などに多用されるため、味はもちろん、見た目や大きさも厳しく評価されるマンゴーには、繊細な心配りが必要だ。若き後継者、そして彼を囲むベテランがタッグを組み、日々品質向上に励む。

憧れから責任へ

 家族で約2500坪の畑を管理する農家の3代目として、両親の後ろ姿を小さいころから追ってきた大城勇貴さん。果樹、花き、野菜を、「時代のニーズを読んで、いろいろなものを育てていますよ」という父・良彰さん(55)が一番の師匠だ。3兄弟のうち、家業を継いだのは一人。「小さい時から、農業に興味があって、農家に憧れていました」

 しかし、これだけの規模と品種を管理する両親の下で、すぐに農家デビューはしなかった。高校在学中からアルバイト先は糸満市の菊農家。5年の修行を積んだ。「最初から家族でスタートするのではなく、地域の先輩の所で勉強させてもらった方が良いという父のアドバイスもありました。その時のつながりは、大切な経験。今も定期的に親睦会をしたりしているんですよ」と話す。

 父の傍らで、マンゴー栽培を手掛けて約1年。朝8時ごろから夕方6時ごろまで畑にいるという。

 「キーツは、将来性がある有望な作物だと思っています。半面、比較的新しい作物だからこそ、試行錯誤を繰り返して最良の方法を探らないといけないんです」

 畑の隅に、大きくえぐられた果実が置かれていた。

 「キーツは人気者で、ネズミや昆虫なども果実が大好き。全く油断できないんですよ」と話す。さらには、「マンゴーは、高級フルーツとして認知されているので、少しでも傷があると商品価値が落ちます」と、大城さんが指さす先には、ほんの少し摩擦あとがある大きな実。細心の注意をはらっても、自然を相手にする仕事に終わりはない。 「一番の特徴は、追熟型ということです。収穫してすぐに食べごろではなくて、空調の効いた出荷場で寝かせます。出荷までは、職員の皆さんが置き方を変えて均等に熟すよう気を配ってくれます。管理をお任せできるので、農家としては本当に助かっています」と、周囲へ感謝の言葉を口にする。

 「直売所である、菜々色畑(豊見城市豊崎)でも販売するんですけど、売り場の方が食べごろや保存法などをていねいに説明しているのを聞いて、生産者としてますます責任を感じます」

 憧れから責任感へ。経験を重ねるごとに確実に手応えを感じている。

 「一番うれしいのは、昨日できなかったことができるようになること。まだまだできないことの方が多いかな」と、明るい表情で話すのは、周りのサポートがあってこその感謝の言葉だ。口数は多くないが、生産者から消費者へ間をつなぐ多くの人たちの力を実感している。

 将来の夢を聞いた。

 「化粧箱に入っている、ギフトだけがマンゴーではないと思う。たくさんの人に親しんでもらうには、1個でも失敗は許されない。だって、本当においしいんです。商品には力がありますから、僕らはそれを必死で守って、つないでいく責任があるんだと思う」

 マンゴーの里・豊見城市。その地にしっかりと根を張り、未来に向かっていく足取りは力強い。


島 知子/写真・桜井哲也



大城勇貴さん
一つ一つていねいに袋をかけて収穫を待つキーツマンゴーと大城勇貴さん=豊見城市
大城勇貴さん
プロフィール
 おおしろ ゆうき 1991年、豊見城市高嶺生まれ。
 3人兄弟の次男。祖父から続く、多品種栽培農家の3代目。子どものころから農業に夢を持ち、県立沖縄水産高校在学時から、糸満市の菊農家でアルバイトを始め、高校卒業後も、継続。菊農家で計5年間修行。「すぐに家族と一緒ではなく、外でもまれた方が良い」という父のアドバイスもあったと言う。現在は、両親と共にキーツマンゴーの品質向上に心を配る。マンゴー拠点産地・豊見城市の次代を担う人材だ。
大城勇貴さん
☆大城さん家のオススメレシピ☆
キーツ乗せタコライス
キーツ乗せカレー

 キーツの甘みと香りをピリッと辛いタコライスとカレーのトッピングに応用してみました。定番料理がたちまち高級なメーンディッシュに。果肉を保存する時は、皮をむいて冷凍します。シャーベットにしたり、アイスクリームに添えると、おしゃれなデザートのできあがりです。
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