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[No.1421]

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「表紙」2012年06月21日[No.1421]号

沖縄を食べよう 14

沖縄を食べよう 14(2012年06月21日掲載)

地域への愛情と責任
大城 淳さん(38) ベビーリーフ(宜野座村)



 長さ10〜15㎝、濃淡さまざまな緑、鮮やかな赤、形も食感も個性的なみずみずしい葉が、出荷を待ちわびている。

 「ベビー」と冠している通り、発芽後30日以内に収穫される若い葉を、愛おしそうに見つめる大城淳さん(38)。

 環境関連企業から転職した経験から、地球にやさしい農業に強いこだわりをみせる。「農薬は一切使わず、収穫が終わったらいったん冠水させて虫を死滅させます。 でも、化学肥料でなく牛ふん堆肥を使うので、虫や雑草は100%防げない。追いかけっこです」と、日々の細かな作業の苦労を感じさせない笑顔を見せる。

整然と並んだ小さな葉に託した夢を聞いた。

 周囲の協力に感謝

 父の誘いで農業に転向した時から、信念としていることがある。地球にやさしい農業をしよう—。当初菊栽培を手伝っていた大城さんに、バイオ事業を手掛ける社長から声が掛かった。安心・安全なベビーリーフをやってみないか—。31歳のころだ。

 初めて手掛けるベビーリーフの栽培ノウハウを、地域の先輩から学ぶ。さらに環境保全型の農業を推進するエコファーマーや農薬・化学肥料の使用を制限する特別栽培農作物の認定に、積極的に取り組んだ。

 「宜野座村は、農業後継者育成事業など、若い農家への支援に積極的。ハウスなども含めて、設備は村がバックアップしてくれた。初期投資への支援は、農家にとって大きいです」と、さまざまな人との出会いに対する感謝を口にする。

 大城さんのベビーリーフは、砂地栽培も特徴の一つだ。「川砂だと細かすぎるので、海砂を使っています。水耕栽培なので、水分調整が肝心。砂で作れるのか?って驚かれますが、水持ちも良いし、僕は、砂だからできたと思っています」。

 栽培品種の選定も試行錯誤を重ね、季節によって種類を変えながら常時15種ほどを育てる。水菜、ターサイ、リーフレタスなど、それぞれ個性の違う野菜を、ベンチ(縦6m、横1.6m)と呼ばれる設備に並べ、1人で54ベンチを手掛けている。

 「一番難しいのは、虫。農薬は使いたくないから、収穫が終わって砂地をきれいにしたら、2日間水没させます。でも、牛ふん堆肥など天然肥料を使うので、その中にいる虫の卵や雑草の種を100%除去できるわけではないんですね。それに、日照も課題の一つ。夏場の強い日差しに弱いんですよ。黒い網を掛けたりして日照調節してあげないと、発芽すらしてくれません。自然と上手に付き合って過保護に育てています」と笑う。

 栽培が軌道に乗りだし自ら販路拡大に取り組んだ。

 「直売所などに卸していたんですけど、量も収入も安定しませんでした。それで、サンエーさんに飛び込みで営業に行きました」

 大城さんの栽培方法へのこだわりと情熱が認められ、契約にこぎつけた。契約後は、6人掛かりで一日平均300パック、一年を通して出荷する。

 「時々、売り場を見に行きますよ。売れてるかな、どんな人が買ってくれてるかなって。一番の励みになります」と、生産者としての責任を、現場で確かめる大城さん。今後の夢を聞くと、

 「規模を拡大して、県外へも出荷したいですね。そのためには、『ベビーリーフと言えば宜野座』って県内の人にもっと認知してもらわないと。まだまだこれからです」と、表情を引き締める。

 ふと、ハウスの脇を見ると、商品にならない根や茎が大切に袋詰めされて積まれている。

 「近くで自然農法で鶏卵を出荷している人がいて、上等野菜だからって引き取りに来るんです」

 地産地消、循環型農業に気負いなく自然体で取り組む大城さん。地域への責任が、その言葉からにじみ出る。


島 知子/写真・島袋常貴


地域への愛情と責任 大城 淳さん(38) ベビーリーフ(宜野座村)

大城淳さんが愛情こめて育てるベビーリーフ=宜野座村

地域への愛情と責任 大城 淳さん(38) ベビーリーフ(宜野座村)

プロフィール

 おおしろじゅん 1974年宜野座村生まれ。宜野座高校、沖縄国際大学を経て、26歳まで環境保全研究所に勤務。父が定年を機に所有している土地で農業を始めた際、「一緒にやらないか」と声を掛けられ、環境にやさしい農業を目指し転向。

農薬・化学肥料を使わず、県内でも珍しい砂地栽培のベビーリーフを仲間5人と共に手がける。流通経路も自ら開拓する努力家だ。

地域への愛情と責任 大城 淳さん(38) ベビーリーフ(宜野座村)
☆カンナリゾートヴィラのオススメレシピ☆
ベビーリーフのシーザーサラダ
宜野座バーガー
 大城さんがベビーリーフを直接卸している宜野座村漢那のカンナリゾートヴィラ。食感の違いを楽しめるサラダは、葉がやわらかいので直前にドレッシングを。地産地消の宜野座バーガーは、色と形の違うベビーリーフが楽しい。
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