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[No.1407]

  • (金)

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「表紙」2012年03月15日[No.1407]号

沖縄を食べよう 6

沖縄を食べよう 6(2012年03月15日掲載)

畑”育て“収穫楽しむ
富名腰泰裕さん(31歳)ホウレンソウ(南城市)



 南城市大里にある畑が富名腰さんの「職場」。整然と並んで収穫を待つホウレンソウの濃い緑色が、目にあざやかに飛び込んでくる。富名腰さんは、ホウレンソウだけではなく、季節によって小松菜、チンゲン菜など、さまざまな葉野菜を栽培しているそうだ。植えつけから収穫までおよそ2~3週間とサイクルは短いが、収穫の喜びもそのたび味わえるのだと笑顔で話してくれた。

 ”最良“求め、試行錯誤

 富名腰さんは29歳からこの世界へと飛び込んだ。高校卒業後、建設会社に就職し順調に生計をたてていた彼が、転身するきっかけとなったのは祖母の姿だった。

 「祖母が自家菜園の小さな畑をやっているんですが、90歳をすぎても元気に、楽しそうに畑仕事をしている姿を見るうちに、自分もやりたいなって思うようになっていったんです。小さなころからちょこちょこ手伝いをしていて、畑仕事が楽しいってことも分かっていましたし」

 やりたいという気持ちは日に日に膨れ上がるものの、生活を考えれば現実的ではない。そう思いながら過ごしてきたのだが、28歳になり、年齢的に最後のチャンスではないかと悩み、ついに農業の世界へ飛び込んだ。

 「建設業を続けようかなとも考えたんですけど、『農業でメシを食うのは難しいからやめろ』って周りからけっこう言われて、逆にそれが背中を押しましたね」

 不退転の決意で退職した富名腰さんは、まず知識を、と沖縄農業大学校の短期コースへ進学。畑を造る土地もなく、資金もなかった彼にとって、まさに人生をかけたゼロからのチャレンジだったが、彼はそのチャレンジを見事に成功させ、卒業後は、すぐに今の畑を始める。そこには、ある出会いがかくされていた。

 「学校に、農園を経営されている会社の社長さんが来られたんです。それで、やる気があるなら、土地も紹介するし、資金を出世払いで融資するからやってみないかって声をかけてもらって」

 通常なら卒業後は、県の助成金を受けながらベテラン農家でさらに2~3年研修を積みながら資金を貯め、自分の畑を始めるのが一般的な進路であり、学校からもその道を勧められたのだが、彼はそこでも挑戦を選んだ。

 「会社員を辞めて、農業の道を選んだ時点で、覚悟は決めていましたし、一からやって自分の力を試そうと思ったんです。と言っても、今もその社長さんのところに野菜を納品させてもらってますから、自分ひとりの力ではないんですけどね」

 あこがれだった農家となった現在。彼は毎日、日の出とともに起床し、畑へと向かう。収穫から始め、選別、出荷、納品までを午前中に終わらせ、午後は植えつけや、追肥など管理作業に追われ、気づけば夕暮れだ。天侯を気にして、土を気にする。どうすればおいしくなるか試行錯誤をくりかえし、惜しみない愛情をかけて育てている。 「まだまだ、上手くいかないことの方が多いですけどチャレンジして良かったと思います。楽しいですから(笑)」

 自分の力を試しだして3年。前進を続ける彼に、次なる目標を尋ねてみると―

 「昨年から他の農家さんたちと協力して取り組んでいるんですが、ショウガを南城市の地域ブランドとして流通させたいと考えているんです、お世話になった方々のためにも、成功させたいです」

 そう、恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべながら答えてくれた。

 佐野 真慈/写真・佐野真慈


畑”育て“収穫楽しむ
みずみずしいホウレンソウを収穫する富名腰さん
畑”育て“収穫楽しむ
プロフィール
 ふなこし やすひろ 1981年南風原町生まれ。沖縄工業高校土木科を卒業後、建設会社に就職するも、あこがれを捨てきれず28歳で退職し農業の世界へ飛び込む。
以来、試行錯誤を繰り返しながら、「自分の畑」を守り、収穫を楽しむ毎日を送っている。
畑”育て“収穫楽しむ
☆富名腰さんのオススメレシピ☆
ホウレンソウの味噌汁
ツナとホウレンソウのゴマ和え
ホウレンソウのだし巻き

 万能ビタミンと呼ばれるビタミンCは、美肌効果が有名。また、鉄と一緒に摂れば吸収率が高くなり、ビタミンAやビタミンEと摂ると抗酸化作用が高まります。ホウレンソウにはこれらの栄養素が全て含まれているのでとても効率の良い野菜。また、ビタミンCは熱に弱いので、火を通しすぎず手早く調理がポイント! 新鮮なものはシンプルが一番おいしいですよ。
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