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[No.1402]

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「表紙」2012年02月09日[No.1402]号

輝くママ HAPPYライフ 3

輝くママ HAPPYライフ 3(2012年02月09日掲載)

物流の一端担う
(株)沖縄急送 大型牽引車ドライバー 我那覇 美奈子さん



 大型車両やフォークリフトがせわしなく行き交い、コンテナの山が並ぶ那覇新港埠頭。物流会社・(株)沖縄急送でドライバーとして働く我那覇美奈子さん(39)の姿が、大型トレーラー・ヘッドの中にあった。各地から船で沖縄に着いたさまざまな貨物コンテナが、フォークリフトで次々とトレーラーに積まれる。ドーンという大音響の中、同僚や取り引き会社の担当者と、手短かな言葉で的確な指示を交わし、次々と荷台に積んで会社にピストン輸送する。21台のトレーラーを所有する同社でも、女性ドライバーは我那覇さん一人。どのような日々を過ごしているのだろう。

 気配り上手で頼れる存在

 商業高校卒業後、専業主婦を経て、自動車整備会社の事務として就職した我那覇さん。

 「そのころから車が好きでした。事務より、エンジニアの仕事を見ていたり、お客さんに修理と整備の説明ばかりしているので、会社が事務を補充したくらいで。あっはっは。じっとしていられない性格みたいです」

 大型牽引車両のドライバーになったきっかけは、偶然のようで必然だった。

 「たまたま見掛けた女性ドライバーが地元の先輩で、よし、自分にもできる、やってやろうって」

 25歳まで、普通自動車運転免許も持っていなかったが、負けん気な性格が幸いし、29歳の時、大型牽引免許を1カ月で取得。30歳で現在の会社に入社した。当初、小型貨物車で配達を担当していたが、3年後、思わぬ形で大型を任された。

 「引き継ぎに3日しかなくって、運転確認も必死でこなしました。それに、港湾って独特のルールとか業界用語、言葉遣いがあるから、理解して使いこなすのが大変でした。前任にいちいち聞いてたら、1カ月の電話代が2万8千円掛かりましたよ」

 150センチ台の身長の我那覇さんが、自身の胴回りより大きなハンドルを繰る。最大積載重量は9トン超。走行中は、上下にかなり揺れる。埠頭と会社の距離は約3・5キロにもかかわらず、

 「特にお盆と年末年始は忙しいですよ。1日約30本(往復)、100キロくらい移動したかな」

 と、こともなげに話す。

 一方、長男を授かった後に成人式を迎えた我那覇さんだったが、家庭を顧みない夫との生活は続かなかった。

 「当時、3歳(長男・駿さん)と1歳(次男・貴矢さん)だったから、息子たちは事情を飲み込めてなかったと思います。3人で再出発できたのは、何より両親のおかげです」

 共に暮らすご両親は、親子3人を常に温かく見守ってくれている。

 「実家に戻った時も『おかえり』『何があっても味方だから』って言ってくれて。ドライバーの仕事に就く時も『あなたのやりたいことをやりなさい』って。両親には本当に感謝しています」

 長時間、車中で独り過ごす業務中、楽しみは仲間との無線交信。渋滞や事故などの交通情報の交換、互いの業務確認はもちろん、仲間だからこそ分かり合える胸の内を話すこともある。

 「勧められて無線免許を取ったらはまってしまって」と話しながらも、無線が届く。

 「○○さん、今日はどちらですか?長距離ですね、お気をつけて今日も一日頑張りましょう、よろしくですよー」

 「はい、了解。美奈ちゃんも安全運転で、よろしくですよー」

 女性らしい配慮が感じられる交信だ。そんな多忙な日々を過ごすうち、ドライバー歴は10年になった。

 息子さんたちは母の仕事についてどう感じているか聞くと、

 「友達に、”いったーお母、豪快だなー“って言われてるみたい。はっはっは。悪い気はしないです」

 と笑顔で話す。

 息子たちも成長し、長男の駿さんは就職、次男の貴矢さんは部活と忙しい。ライフスタイルが変わり、一緒に過ごす時間は少なくなったが、3人を見ていると、”兄弟“のようだ。撮影の際も、自然と体を寄せ合い、微笑む息子2人を見守る母の姿。仕事柄、豪快な印象の我那覇さんが、成長した息子たちを前に、目を細めてやさしい母の顔になる。

 「今の仕事には、やりがいを感じています。息子にも自慢のおかあって言われてます」

 母として、ドライバーとして、女性ならではの気配りで自然にふるまう我那覇さん。今日も物流の第一線で力強くハンドルを回す。

 島 知子/写真・照屋 俊


物流の一端担う
我那覇さんの”仕事場“である車両=沖縄急送
物流の一端担う
がなは みなこ:1972年、北谷町出身。長男・駿さん(19歳)、次男貴矢さん(17歳)、両親と生活。我那覇さんいわく、「駿は、シャイだけど決める時は決めてくれる。貴矢は、ウーマクで人が好きで人にも好かれるタイプ」だそう。親代わりに孫を育ててくれた両親へ「父母会でもおばあちゃんの方が有名人。本当に両親のおかげです」と感謝の気持ちを表現する。
物流の一端担う
仕事紹介
 世界中から集まる貨物を消費者へつなぐ。勤務は運搬船の運行時間に合わせ、気候にも左右される。我那覇さんは、大型牽引免許とフォークリフト免許を持ち、運ぶ量が多い大型を持つドライバーは貴重な存在。現場で頑張る女性はまだまだ少ないため、例えばトイレが限られた場所にしかないなどの側面もあるそう。
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