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[No.1377]

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「表紙」2011年08月18日[No.1377]号

うちなー未来創る 4

うちな~未来創る(2011年08月18日掲載)

料理好きからプロへ
浦添工業高校調理科

 ピンと張りつめた空気の中、真っ白な調理服をまとった集団が、一心に作業する。まるでホテルの調理場のような風景が繰り広げられている高校がある―県立浦添工業高等学校調理科3年生、総勢40名の生徒たち。調理方法のみならず、原価率を計算しての食材選びにいたるまで、全てを自分たちで決定し、45人分のフルコースを作り上げる。また、年に一度開かれる「食育教室」では、こども達に料理のイロハを教える優しい先生でもあるのだ。

修錬積み重ね、「喜び」作る

 調理科の定員は、40人。つまり、一クラスしかない。その狭き門をくぐりぬけてきた生徒たちは、意志が強いと感じると、、指導する先生は語る。

 「一般的に高校受験は14歳には始まります。彼女たちは、わずか14歳で、自分の人生を考え、調理師になるんだという強い決意をもって進学してきたわけですから単純にすごい! と思いますし、その分、授業に対する意識も高いのは当然だと言えるかもしれません」

 14歳、まだ子供とも言えるその年齢で将来を決定したいきさつを生徒に尋ねてみると「父が調理師なんです。それに、姉がここのデザイン科に通っていたので」という子もいれば、「小さい時から母の手伝いをしていて」や「パティシエになりたかったので、自分でここを探し出して受験しました」と答える子もいる。驚くのは、この年頃にありがちな、恥らいながら「なんとなく」や「誰それに勧められたから」と答える生徒は全くいないことだ。

 はっきりとした目標をかかげて、入学した彼女たち、その後、わずか3年間で調理に関わる技術と知識を習得していく。

 「講師の先生が、県内の一流ホテルのシェフだったりして、目標が身近にあるのが良いところです!」とキラキラとした眼差しで話す。クラス替えがないので、仲間との結びつきは非常に強い。だが、そこはやはり高校生。ケンカすることもある。

 「フルコース実習は年に五回あって、前菜、サラダ、メーン、デザートをグループ分けして持ち回りで受け持つんです。その時に、どんな食材を使うか、調理方法は? って話し合いをするんですけど、みんなやりたいことがあるので、けっこう激しくなっちゃったりもするんです。でも、楽しいですよ。きょうだいみたいな感覚かも(笑)」

 喧々諤々のミーティング。それがあるからこそ、料理が完成した時の喜びも大きいのだと笑う。

 そんな、超が付くほど真剣に学ぶ生徒たちが年に一度だけ、先生となる日がある。全国調理師養成施設協会からの要請を受け、地域の小学生とその保護者を対象に学校で開催する「食育教室」だ。 

 互いに刺激しあいながら学んだ知識を基に、企画、進行、メニューに至る全てを生徒たちが進め、受講する子供たちに、手取り足取り、教授する。

 「どうすればうまく伝わるか、相手に合わせて考えないといけないので大変です。包丁や火も使うので、ケガだけは注意しないといけないですし」

 悩みどころは尽きないのだと語るのだが、その中にも学ぶ意欲が見え隠れする。

 「教えるためには、全てを理解していないとダメだなって思うんです。だって自分が分かってないことを自信を持って教えることはできないし、逆に教えられる側も不安になるじゃないですか?」

 自信を持って不安を与えないように。そのためには、日ごろからの修練が大事なんだとはっきりと答える。生徒から先生へと変身する、年に一度のイベントを楽しむのも良い。だが、そこからも課題を見つけ出し、夢へと向かって前進する彼女たちの姿勢は、もはや立派なプロだと言えるのではないだろうか。

佐野真慈


料理好きからプロへ
笑顔でいっしょに=調理実習室での「食育教室」にて
料理好きからプロへ
まさに、手取り足取り
料理好きからプロへ
ズラリと並ぶたまごたち
料理好きからプロへ
盛り付けが美しい
学校紹介

浦添市。創立28年の比較的新しい学校で、生徒数280名。工業高校ではあるが、男女比は、ほぼ同数。調理科の他に、情報技術科、インテリア科、デザイン科がある。レスリング部は全国でも強豪校として知られている。

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