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[No.1362]

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「表紙」2011年05月05日[No.1362]号

お仕事燃焼系 魅ちびけ! インストラクター18

お仕事燃焼系 魅ちびけ! インストラクター18(2011年05月05日掲載)

海の美しさに癒され
ボディボード 入波平優子さん

 3月11日に東日本を襲った大災害。繰り返し放送された津波の映像を見て、自然の強大な力に誰もが言葉を失った。しかし、自然は奪うだけのものではない。「こんな時だからこそ、正しい知識をもって、身近にある美しい海を守り、楽しんでほしいと思います」。ボディボードショップirinamy代表・入波平優子さんは震災後自粛していた活動を再開した。

正しい知識でリスク回避 母親の経験、指導に生かす

 入波平さん(36)がボディボードを始めたのは20歳の頃。きっかけは、アトピー性皮膚炎だった。「小さい頃に悩まされていたアトピーが、高校の終わり頃にぶり返して、短大2年当時は、もう勉強に集中できないほどひどくなっていたんです。それも首と顔だけ。それで、海水がいいのではと海の水を汲んで来て顔につけたら、少し症状が改善したんですね。整体師をしていた父が、それなら海で泳いだらと助言してくれたんです」。そんな折、友人の縁で波に乗ってみないかと誘われた入波平さん。体力が落ちていたこともあり、先ずは近所の公園でウオーキングをすることから始め、夏休みに入ったら始めようと準備を整えたという。そして夏休みの初日。初めてボディボードを経験した入波平さんは、海から上がった後の肌の変化に驚くことになる。「海水の成分なのか、思い切り楽しんで発散したのが良かったのか、肌に潤いを感じたんです」。

 ボディボードの楽しさに目覚めた入波平さんは、練習を重ね、めきめきと腕を上げていく。そして県内の大会で優勝してスポンサーが付き、県外の大会にも参加するようになる。教員を目指し、免許も取得していた入波平さんだったが、アトピーで悩んでいた自分に生き生きとした生活を取り戻させてくれた海の素晴らしさを人に伝える仕事がしたいと考え、プロへの道を選択。千葉へ移住してプロのサーファーの下で修業し、2001年にプロテストに合格した。「沖縄では海が身近にあるから、誰でも気軽に海に入れます。でも、例えば波乗りの現場では、上級者が、自分が波に乗ることを優先して、一緒に来た初心者が置き去りになってしまったり、きちんと危険性を理解しないで事故に遭ってしまったりといった問題がありました。当時は、県内ではまだボディボードの知識が一般には浸透していなかったんです。家族には教員の道を勧められましたが、海との付き合い方を伝える義務を感じたんです」。プロになった入波平さんは、ツアー転戦を希望していたが、家庭の事情で断念。沖縄へ戻ってirinamyを立ち上げた。

 ボディボードのスクールは、先ず、沖縄の海の特徴や、波ができるメカニズム、危険生物などについての講習から始まる。1時間以上かけて、波の崩れ方や部位の名称から、月と潮の干満の関係まで学び、いざ海へ。ビーチでボード上の姿勢や波の見方を復習してから海に入り、練習が始まる。「子どもでも、小学校3年以上なら一人でできます。1歳頃からは、親と一緒に楽しむことができます。私自身、2人の子どもを持つ母として、そして海で健康を取り戻した経験を持つものとして、海との接し方を伝えていきたいですね。正しい知識を持つことで、リスクを回避したり軽減したりすることができる。正しい対処の仕方を知ることで、冷静に行動できる。それによって、海が持つ癒しの力や楽しさをもっと多くの人が体験してくれたらと思います。今回の震災で、波乗りを自粛してきましたが、今は、沖縄から私たちができることを探して行動していこうと思っています。世界中のみんなが、穏やかな気持ちで海と親しめる日が来ることを祈っています」


海の美しさに癒され
波との一体感を味わう入波平さん=北谷町砂辺
海の美しさに癒され
いりなみひらゆうこ 36歳。北谷町出身。県内初のプロボディボーダー。日本サーフィン連盟(NSA)公認指導員。JLA(日本ライフセービング協会)公認ライフセーバー。日本サーフィン連盟(NSA)公認ジャッジ。完全予約制のボディボードスクールLIFE MEDICINE PROJECT irinamy代表。北谷町宮城1-333 http://www.irinamy.com/
海の美しさに癒され
海に入る前に正しい姿勢やタイミングを説明#
クリップ

 入波平さんも参加する沖縄サーフライダー連盟では、「今、私たち沖縄のサーファーにできること!」をスローガンに、2011年に開催予定の県内サーフィンコンテストをチャリティーコンテストとして開催する。また、県内サーフショップには義援金箱を設置して、集まった義援金は日本赤十字社県本部を通じて被災地へ寄付する。


編集・奈須川さと子/写真・島袋常貴
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