安全かつ
エキサイティング
ことし四月に北谷町に完成した砂辺馬場公園に足を運んだ。晴れた週末。若いお父さん、お母さんと乳幼児から小学校低学年くらいまでの子どもたちの姿が目立つ。広々とした芝生が特徴的だが、そこに子どもの姿は少なく、人気があるのはやはり遊具だ。アスレチックは二十年ほど前のものと比べると、カラフルで、ごちゃごちゃした印象。構造が複雑になり、よりエキサイティングになっているようだ。ロープで編まれたはしごや、筒状の通路、そうかと思えば小部屋感覚のカプセルがくっついていたりと、冒険心をくすぐる造りだ。合体している滑り台は長く、ローラー式になっている。
難所をクリアし、滑り台に到達した女の子が、後続の友だちを待って並んでキャーキャーと滑ってきた。お母さんに見守られながら黙々とロープをたぐる子。新しいルートを探して何度も出入りする子。みんな楽しそうだ。その中に交じって(子どもたちに警戒されながら)滑り台を滑ってみる。思ったよりもローラーの滑りがいい。しかし加速がつきそうになるとその先がカーブになっていて、うまい具合にスピードが緩まる。摩擦でお尻がジンジンと非常に熱くなるのは予想外だが、記者が知っている滑り台より断然面白い。
少し離れたブランコ乗り場。
「ばあちゃん、もっと強くー!」
と幼い兄弟がブランコを押してもらっていた。太いロープが亀の甲羅のように編まれていて、そこにもたれかかるような体勢。なるほど、これならひっくり返る心配がない。こわごわ乗ってみた。あれれ、漕ぎにくい。仰向けに近いこの体勢では、従来のようにうまく体を操れない。動いているブランコからジャンプして飛び降りるなんて言語道断。新しいデザインは危険な行為をも未然に防いでいる―感心しきりで公園を後にする。
昨年開園した豊見城市の海軍壕公園、ことし三月に完成した与那原町の東浜きょうりゅう公園などを巡った結果、やはりダイナミックなアスレチックと、長いローラー式の滑り台、安全ブランコを発見。このところの流行なのだろうか? そして姿を消した遊具はなぜ、なくなってしまったのか。
遊具が姿を消す理由
県の公園緑地係に問い合わせてみたところ、特に”こんな遊具を設置するように“という指導はしていない、との回答。ならば、と浦添市の遊具メーカー、株式会社沖縄工設を訪ねた。商事部長の村上勲さんと商事部一課長の牧内康さんが質問に応じてくれた。
「わたしたちが最重要視するのはすべての子どもの安全です」
と力強い村上さん。聞けば平成十四年には国土交通省が発表した「都市公園の遊具の安全確保に関する指針」に基づき、「遊具の安全に関する基準(案)」なるものが策定されているという。箱型ブランコはもちろん、釣り下げられた一本の丸太に乗って遊ぶ「遊動円木」や回転ジャングルジムなどはこの基準を満たさず、現在は作られていない。
「大人数を乗せて動く可動遊具は減ってきています。複数で遊ぶものは減る傾向にありますね」
と牧内さん。それでは、安全性以外に遊具が移り変わる原因ってあるのだろうか。
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「複数で遊ぶものが減っていることは少子化にも原因があるかもしれません。それと(アスレチックが増えていることに関しては)都市化が挙げられますね。わたしたちが子どものころは、広い場所に点々と置かれた遊具の間を走り回って遊んだものですが、今はスペースが限られていますから、以前は個別に置かれていたものを一カ所にまとめているんですね」
村上さんの話を牧内さんが継ぐ。
「アスレチックは正確にはコンビネーション遊具というんです。組み立て式で、スペースや予算に合わせてトンネルやブリッジなどの組み合わせが幾通りにも可能なんですよ。ほかに以前と比べて変わったな、と感じるのは遊具の素材です。一に安全性、二に耐久性、三に機能性を求めて、木製から鉄、アルミと変化して今は強化プラスチックになっているんです」
なるほど、そうだったのか。ではもう一つ、一時期いろいろな地域の公園で見かけたタコの滑り台、あれは流行だったのでしょうか。
「流行というよりあのころはコンセプトという意識が低かったんですね。今は”この場所にはこういう歴史があるから遊具はこういう形にしたい“などと、意見がはっきりとあって個性が出てきた。以前は役所の判断だけで設置が決まることが多かったと思いますが、今は近隣に住む方々の要望を聞いていますね。(村上さん)」
実際に遊具選びはどのように行われるのだろう…、と思い始めたところ、与那原町はきょうりゅう公園を作るときにワークショップを開きましたよ、と牧内さんが教えてくれた。いざ、与那原へ。
みんなが欲しい遊具とは
「与那原町の職員でまちづくり研究会を発足してワークショップを開いたんです。保育所の先生方も交えた三十名ほどを五班に分けて、県内の公園を廻り、それを参考に各班が作りたい公園のイメージを発表して互いに採点しました」
と話すのは都市計画課の主任技師、比嘉義明さん。このコンペで最高得点を獲得した班の素案を見せてもらった。座る部分がまわしのようになったバケット型ブランコ、スプリング遊具、滑り台、コンビネーション遊具などが盛り込まれ、「遊具の選定」という採点項目で高い評価を得ている。利用者が今、望んでいる遊具の傾向が見えてきた。班のメンバー、企画財政課の上原謙さんいわく、
「面白い遊具が置いてある公園にしたい、ということが最初にあって、子どもも親しみやすいということで、怪獣の遊具を選んだんです。理想の公園になったと思っています」
インパクトのあるこのシンボルが、新しい街のひとつの核になるように―という思いも込められている。現在研究会では、建築予定のもう一つの公園の遊具を、自分たちの手でデザインしているそうだ。
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安全面から淘汰されたもの、社会の移り変わりによって需要が減ったもの、形を変えて進化しているもの。遊具の盛衰の理由はさまざまだ。安全で、より面白い形への進化を歓迎しつつ、近い将来、「お母さんの時代はブランコはこんな形だったのよ」と子どもに絵を描いてみせる日がくるだろうと思うと、少し寂しい気もする。 (翁長洋子)
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ローラー滑り台
現在のブランコ
牧内康さん
取材中、偶然発見した回転ジャングルジム
与那原町の職員のみなさん。前列左が比嘉義明さん、その後ろが上原謙さん
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