沖縄の日刊新聞「琉球新報」の副読紙「週刊レキオ」沖縄のローカル情報満載。



[No.1411]

  • (土)

<< 前の記事  次の記事 >>

「表紙」2012年04月12日[No.1411]号

輝くママ HAPPYライフ 7

輝くママ HAPPYライフ 7(2012年04月12日掲載)

料理は家族同様大切
料理家 新崎 亜子さん



 「鶏の手羽は、関節に包丁を入れると、骨がスルッと…あれっ? スルッと…スルッと…外れました」。

 新崎亜子さん(39歳)が主宰する料理教室。彼女のはつらつとしたキャラクターとユーモアあふれる語り口で、教室のムードはなごやか。初対面の人同士もすぐに友達になり、新崎さんの周りには笑いが絶えない。しかし、3人の男の子の母として、初めての子育てに悩み、笑顔が消えた時期もあったという。そんな時、新崎さんを支えたのは、家族、そして料理だった。新崎さんにとって、家族の愛情と同じくらいに、料理は特別な意味を持っている。

 料理に夢中になれる喜び

 大学卒業後に就職した時、「3年間は社会勉強をして海外に行くんだ」と強く心に決めていた。その決心が、その後の人生を決定づけていく。25歳の時、料理と語学の勉強のため留学したオーストラリアで、最愛の理解者である夫・盛也さんと出会ったのだ。

 「多様な文化に触れるためオーストラリアを選んだのは、寒いのが苦手だったことと海の近くに住みたかったから。彼との出会いも、沖縄で生活することになったのも、運命だと感じました」

 夫の実家である沖縄市の老舗ホテルに夫と共に勤め、結婚2年目に長男・盛くんを授かった。親子3人、忙しくもにぎやかで幸せな日々。しかし、盛くんが2歳になる直前、家族からある提案をされる。

 「子育ての先輩であるお姉さんから、一度診てもらった方が良いって勧められて。まさかぁ、なんて半信半疑で診断に行ったんです」

 告げられたのは、「発達障がい」だった。

 「認めたくない。あと半年経てば、今できないことも出来るようになるかもしれないと。ものすごい心の葛藤がありました」。

 母子通園施設に行き始めて半年。初めての子育て、しかも想像してもみなかった状況。目に見えない将来の不安にとらわれ、出口が見つからない日々。

 「当時の写真は一枚も笑ってません。ほかの子を見るのがつらくて家から出られない。急に悲しくなって涙が出たり、ささいなことを夫にぶつけたり。通園のために3カ月の次男を預けなければならないことでも自分を責めていました」

 新崎さんの苦しい状況を救ったのは、一番側で見守り続けた夫からの「休んでて、いいよ」の言葉。そして、初孫を何よりかわいがり、年に1、2度必ず沖縄に足を運んでくれた両親の存在だ。

 「このままでは、家族も自分も将来もダメになる。両親だって、こんな泣いてばかりの人生を望んではいないだろうなって」

 気持ちを奮い立たせ、月に1度だけ子どもたちを夫に完全に任せ、夢だった料理の世界へ。周りの友人に声をかけ、料理サークルのように始まったのが原点だ。

 「月に一度でしたけど、子育てから離れてレシピとかを一生懸命考えているうち、”子どもと一緒に居過ぎたのかな“って気づかされて。”私たちが死んだら子どもたちはどうなるんだろう“とか、今考えても答えが出ないことは、その時考えればいいんだって。リセットできました」

 夫の絶大な協力を得て、新たな一歩を踏み出した新崎さん。ブログが評判になり、参加者の輪は広がっている。

 「料理のおかげで、子育てに対する意識も変わりました。わが家のように子どもに障がいがあると、どうしても生活や仕事に制限があります。でも、私が夢中になれることを見つけることができたように、子どもたちにも、やりたいことがあるならあきらめないで努力してほしいと思うんです」

 マイペースな盛くん、しっかり者の次男・隆士くん、ムードメーカーの三男・直士くんに囲まれ、毎日が運動会のような、お祭りのような日々を送っているであろうことが想像できる。

 「3人の子がいると、よく”育児のベテランですね“なんて言われますが、3人の個性の成長はどの瞬間も初めてで、新鮮なことなんですよ」

 将来は、家族5人でオーストラリアに行きたい。そして広い世界を見せたい―満面の笑みで生き生きと語る新崎さん。真の強さが笑顔を輝かせている。

 島 知子/写真・國吉和夫


料理は家族同様大切
夫・盛也さんがオーナーシェフを勤める店舗で開かれる料理教室
料理は家族同様大切
あらさき あこ 1972年、埼玉県狭山市生まれ。
大学卒業後、建設会社に就職。3年後、ワーキングホリデー先のオーストラリアで盛也さんと出会い、結婚。盛也さんの実家である沖縄市の老舗ホテルに勤めながら調理師免許などの資格を取得。盛也さん、盛くん(9歳)、慎重派でしっかり者の隆士くん(7歳)、ムードメーカーの直士くん(5歳)の5人家族。休みの日はそろって公園などに出掛ける仲良しファミリーだ。
料理は家族同様大切
仕事紹介
 料理家として活動するためには、新崎さんのように調理師免許、ジュニア野菜ソムリエ、食育指導士などさまざまな資格を身に付けていると活動の幅が広がる。新崎さんは、「沖縄食材スペシャリスト」も取得。地域に根ざした活動にもこだわりを持つ。実務経験が必要なことでも分かるように、現場で生きた経験を積むことも重要なポイントだ。時代の流れを読み、ニーズをいち早くとらえて情報提供する力も求められる。
>> [No.1411]号インデックスページへ戻る

↑このページの先頭へ戻る

<< 前の記事  次の記事 >>